[Report] IVLP×留フェロ サマーキャンプ

チャレンジするまちづくりと教育をテーマに、IVLP×留フェロサマーキャンプを開催しました。

池袋から特急70分の距離にある埼玉県の北西部、秩父郡 横瀬町(よこぜまち)。主要産業であるセメント用石灰採掘で階段状になった武甲山(ぶこうざん)の麓には、棚田の里山風景や川べりが広がる。商店街なし、高校大学なし、観光資源なし、農業適地もわずか。ふるさと納税のキラーコンテンツとなる地場産品も乏しい人口7,500人の消滅可能性都市。何もないことを逆手にとって、変化は富田能成町長以下、役場をあげての日本一チャレンジする町づくり宣言から始まった。

「あなたのやりたい事を横瀬町で実現しませんか」と変則型官民連携を募り、この5年間で企業や大学、町民の女子高生なども含む140件の応募があり、毎月平均1-2件が新規採択されているそう。予算はかけられないが場所や人手、宣伝告知、町が実証実験の参加者を募るなどのコラボ協力をして、人の輪が広がり、チャレンジや失敗がまた新たなチャレンジにつながっている。

「日本一チャレンジを応援する町」として行政窓口の笑顔対応100%目標を掲げる。JA跡地を利用した交流スペース(エリア898やよこラボ)を軸とする中心地づくり。民間企業によるシェアオフィス&サブスク宿泊施設の2階には、木材加工場とこどもたちが雨の日にも室内で遊べる木工ウォールクライミングもある(エリア899)。動線はあえて交わるように、雑多で居心地のよい空間。高齢者向けのスマホ教室が開かれたり、観光案内などにも対応している。道の駅とコラボした地域商社、カフェ&ビアガーデン ENgaWAの設立によって、持続可能で安心で美味しい食農連携や、将来的な地域エネルギー開発も視野に。地域にお金が循環する仕組みをつくろうとトライアルで様々な小商いや雇用づくりを試行中。地域おこし協力隊やJAICAの海外研修、大学生インターンが定着。

県補助金を活用してお試し移住のためのシェアハウスの運用もはじまる。不登校や放課後のこどものためのサードプレイス、タテノイトを訪問。ラボと隠れ家のような屋根裏図書館が融合したウッディーなスペースがとても素敵。宇宙や鉱石などの英語の専門書もズラリ。子育てを機にUターンした地学の科学者夫妻が、豊かな自然も学びの場として、移住してきた子どもたちに探究型の学びを教えたり、サイエンスの専門家を招いた町民参加イベントも開催。本物に触れる贅沢な学びの環境!今後は、町に1つしかない小学校との連携も模索中。子どもたちはフィギュアがあれば英語はわからなくても直観的に理解することに驚かされるそう。

こどもを信じきる
→信頼関係構築
→自己決定・選択に委ねる。

心に刺さりました。

横瀬町長、副町長、部長の三役以下総出で行政の取り組みやウェルビーイング評価、未来のビジョンを語っていただき、フィールドワークに膝詰めの意見交換にと、全力のおもてなしとご案内をいただいた。

熱量。

発想の転換。

資源の有無よりも最後は人的資源。

組織の持続性も含めて、やはり人づくりだと強烈に感じた。

コミュニティづくりのフィールドワークと並行して、合宿のもうひとつの主軸テーマは教育。

地域課題とグローバルな教育の必要性を考えさせてくれたのが、草津温泉で老舗のホテルを営むIVLPアラムナイ中澤牧子氏のゲストトーク。また、もう一人のIVLPアラムナイでトビタテ留学JAPANを最前線で引っ張る西川朋子氏をゲストに迎え、こちらもIVLP同窓生の近藤健志先生が推薦状執筆のためのメンタリングのデモンストレーション。断続的なプログラムに加えて、夕食後も夜遅くまで白熱議論が続き、刺激だらけ

・アメリカの大学に留学中の現役大学生谷津凛勇さん杉田さらさんによるプレゼンが胸がすくほどの驚愕レベルだった。

・海外大学留学を目指す高校生のメンタリングを学ぶ

・高校生に横瀬町のよい取り組みを紹介してモチベーションを引き出すスキットの実演

・海外大情報を知り尽くす辻村慎乃介氏をゲストに海外大学への留学事情の最新アップデート(調べ方、マッチングのポイント、基準や学費、穴場の大学等々)

普段接点のない領域。とても興味深いと同時に、中高生時代にこのような情報にアクセスできる環境や留学の機会に恵まれていたならばと。親の経済力や地方の情報格差を埋めるサポートの構築を応援したいと感じた。

最終日は佐藤貴明先生ファシリテーションのもと海外大学留学を目指す高校生の推薦状を模擬作成。推薦者と非推薦者の目線のズレが頻繁に問題となるため、ワークショップでは、メンタリング→被推薦者抜きで推薦ポスター作成→グループ発表では、被推薦者役からの辛口フィードバックを求めるなど、短時間で現実に即した実践を実現!

横瀬町の皆さま、日本中から集まった先進教育を実践中の先生たち、留学フェローシップの運営や大学生メンター、IVLPアラムナイのさまざまな専門の仲間たち。常に同質集団のなかだけで物事を考えると見失うもの、見えないものがあるから、異業種や異なる価値観の人たちとの対話を大切にアップデートを続けたい。未来志向のエネルギー溢れる人たちとの濃密で楽しい時間の交差が持てたことに感謝です。つながったご縁がまた新たなチャレンジに結びつきそうな予感。ご参加いただき本当にありがとうございました。

最後に、高校生向けキャンプと含めて本企画のすべてを受け入れ対応してくださった、横瀬町まち経営課の田端将伸氏に心から感謝申し上げます。また、JAC-USを常に支えてくださり、横瀬町まで駆けつけてくださったアメリカ大使館アラムナイコーディネーターの小林円氏にこの場を借りて感謝の意を表します。

文章:JAC-USコアメンバー 加藤 千穂原田 貴之