[開催実績] 6/25 JAC-US WEBINAR COURSE #5(Final) 気候正義と公平性

公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)の大田純子研究員と、気候正義と公平性の視点から気候変動を考えるウェビナー・シリーズの最終回が開催されました!外務省の専門調査員として、在ドイツ日本大使館に勤務し、京都議定書の国際交渉に従事、現在でも、日本政府代表団員として、パリ協定の国際交渉(COP)へ出席している大田氏よりお話を伺いました。

その豊富な経験をもとに、COP(京都議定書とパリ協定)における国際交渉の場で、気候正義と公平性がどのように扱われているのかが説明されました。「地球の平均気温の上昇を産業革命前と比べ2℃以内に保つ」という目標を掲げたパリ協定、backcasting(あるべき将来像から、行動を逆算する)という新たなアプローチが用いられた持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)を紹介しながら、COPがどのように構成され、活動家がどのように声を上げ、国際協定に反映させているのかといった、普段私たちが触れることのないお話を聞かせていただきました。

更に興味深かったのは、「環境破壊によって与えられた損害を誰がどう補償するのか?」という議論です。先進国と途上国、世代間、産業の移行別など、さまざまな視点から現在議論がなされているそうです。世界のCO2排出量の70%以上を15カ国が排出し、年間ひとりあたりのCO2排出量も年間0.1t~14.7tと幅広く、パリ協定の1.5℃目標を維持するためには、気候正義と公平性の問題に取り組む必要があるそうです。COPでの提案は参加国が全会一致で初めて採択されるということで、それはまさに、“No one left behind”というSDGsの理念が体現されているのです。

太田氏は、これまで気候変動問題には緩和と適応のアプローチが用いられてきたが、アフリカで開催されたCOP27(「適応COP」と呼ばれる)では、適応を超えて、家屋の損害、農作物被害、生態系の損失、島の損失、伝統的知識の損失、および住民移転といった「損失と損害」へ対話が行われていることを紹介しました。
参加者は、グループに分かれて「CO2 1t削減を高額で自国で行うのと安価でアフリカで行うのとどっちがいいか?」や、「気候変動の影響による損失と損害に関する基金への支払い責任を誰が負うべきか?」など、さまざまなシナリオについて議論しました。

大田さんに交渉の複雑さを紹介していただき、気候正義と公平性が国際レベルでの対話にどのように反映されているかを垣間見ることができ、とても貴重な1時間となりました。大田さんありがとうございました!

これで、5回のウェビナーシリーズが終了。すべての回に参加した人は7月29日に行われるAppreciation Dayにご招待させていただきます。東京でお目にかかれるのを楽しみにしています!